特集:atwiki「AI画像生成・生成系AI 問題まとめwiki」atwiki著作権
「著作権法第三十条の四」(atwiki「AI画像生成・生成系AI 問題まとめwiki」)
目次
atwiki「AI画像生成・生成系AI 問題まとめwiki」のページ「著作権法第三十条の四」(2025年1月20日更新)を、条文、文化庁の資料、国会の会議録、ページが出典に挙げる法律事務所の記事と照らし合わせる。
対象の記述
この条文は集めたデータセットを複製する場合について定めたものであり、AIによる生成物について定めたものではないことが明らかになった。
照合の結果
条文と文化庁の資料の転載は原文どおりで、AI の学習と、生成物を作って使う場面とを分けて考える点も、文化庁の2024年の資料と合う。一方、ページが法律事務所の記事を出典に挙げる「著作者であっても止めることはできない」はその記事に見当たらず、文化庁の2024年の資料は、条件がそろえば無許諾の学習を法的に防げる場合があるとしている。
経緯
atwiki「AI画像生成・生成系AI 問題まとめwiki」のページ「著作権法第三十条の四」は、最終更新が2025年1月20日である1。ページは、生成 AI の議論で取り上げられることの多い著作権法30条の4を解説するものと説明している。
ページには、条文の転載、法律事務所の記事を出典に挙げた解説、それに対するページの見解、文化庁の資料の紹介と抜粋、山田太郎参議院議員の国会質疑の動画などが載っている。
対象の記述は、法律事務所の記事を出典に挙げた解説に続く、次の段落にある。
しかし、当時の時点では2022年以降のようにAI生成モデルが一般に出回り生成物が大量に生産されることを想定していなかった。
下記の山田太郎議員の動画が出てくる前には、生成AIによる著作物が合法か否かについて、「ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。」という条文の解釈次第と言われていた(上記引用の柿沼弁護士の見解もそう)。
しかし、この条文は集めたデータセットを複製する場合について定めたものであり、AIによる生成物について定めたものではないことが明らかになった。
本項では、この段落のほか、冒頭の解説、文化庁の資料についてのページの見解、文化庁の資料の抜粋を扱う。
条文の転載
著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
ページが転載する30条の4の条文は、e-Gov 法令検索の現行の条文と一致する2。本項は、2026年6月24日施行の版で照合した。
30条の4の前半は、著作物に表現された思想や感情を「享受」(鑑賞して楽しむこと)する目的でない利用を、原則として許諾なしに認める。例として挙がる第2号が「情報解析」で、AI の学習はこれに当たると整理されている8。後半の「ただし、」以下(ただし書。原則に対する例外)は、著作権者の利益を「不当に害することとなる場合」を除いている2。
「著作者であっても止めることはできない」
ページは冒頭で、法律事務所の記事を出典に挙げて次の文を載せている。
2019年1月1日に施行された改正著作権法では、AIモデル開発をさらに加速する重要な改正が行われた。
条文の通り、「情報解析を行う場合には著作者の許諾を得ずに著作物を自由に利用できる」ということである。
つまり、生成AIに著作物を学習させることは著作者であっても止めることはできないということになる。
出典:Midjourney、Stable Diffusion、mimicなどの画像自動生成AIと著作権 https://storialaw.jp/blog/8820
出典に挙げる記事に、この文が見当たらない
出典の記事は、STORIA法律事務所の柿沼太一弁護士が2022年8月31日に公開したブログ記事である3。ページはこの3文を鉤括弧で囲んでおらず、末尾に「出典:」と記事名を付けている。記事の言葉どおりの引用なのか、記事をもとにした要約なのかは、ページからは分からない。本項は、記事の現在の版と、2023年4月6日に Wayback Machine(ウェブの保存サービス)に保存された版を読んだ。どちらの版にも、「2019年1月1日に施行された」「さらに加速」「止めることはできない」という文は見当たらなかった。なお、改正法が2019年1月1日に施行されたこと自体は、文化庁の資料と合う5。
記事の中で最も近いのは、次の文である。
そして、AIソフトウェアの開発は、当該「情報解析」に該当するため、結果として「AIソフトウェアの生成に必要な限度においては原則として著作物を自由に利用できる」ということになります。
記事は「原則として」と書き、同じ記事の中で、ただし書による限界を別の項目として挙げている3。学習の禁止を一方的に表明することは「少なくとも法律的には意味がない」とする一方、利用規約に同意して画像を取得した人はその規約に縛られるとも書いている。
もっとも、日本著作権法30条の4も「情報解析」のためであれば無限定に他人の著作物の利用を認めているわけではなく、「当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には著作物を利用することはできません(日本著作権法30条の4但書)。
このように「私が描いたイラストをAI学習に使うのは禁止にします」と表明したとしても、そもそもそのような表明は著作権法30条の4に違反して無効の可能性がありますし、仮に著作権法30条の4に違反しないとしても、一方的な表明が契約として成立することはないため、結論的にはそのような表明は少なくとも法律的には意味がないということになると思います。
ページの3文には、記事にある「原則として」や、ただし書・契約についての留保が含まれていない。この3文がどこから来たのか(ページの編集者による要約か、別の記事か)は確認できなかった。
2024年の文化庁の資料は、条件がそろえば学習を法的に防げる場合があるとしている
文化審議会著作権分科会法制度小委員会は、2024年3月15日に「AIと著作権に関する考え方について」(以下「考え方」)をまとめた8。「考え方」は、学習をやめてほしいという意思表示だけでは、ただし書に当たらないとしている。
……
著作権者が反対の意思を示していることそれ自体をもって、権利制限規定の対象から除外されると解釈することは困難である。そのため、こうした意思表示があることのみをもって、法第 30 条の4ただし書に該当するとは考えられない。
他方で、AI 学習のための著作物の複製等を防止するための、機械可読な方法による技術的な措置としては、現時点において既に広く行われているものが見受けられる。こうした措置をとることについては、著作権法上、特段の制限は設けられておらず、権利者やウェブサイトの管理者の判断によって自由に行うことが可能である。
そのうえで「考え方」は、robots.txt(ウェブサイトが、自動で情報を集めるプログラムに収集してよい範囲を示すファイル)などでの収集の制限と、情報解析用のデータベースを将来販売する予定とが組み合わさる場合を挙げる。この場合、制限を回避して集める行為は、ただし書に当たることが考えられるとしている8。
そのため、AI 学習のための著作物の複製等を防止する技術的な措置が講じられており、かつ、
……
当該ウェブサイト内のデータを含み、情報解析に活用できる形で整理したデータベースの著作物が将来販売される予定があることが推認される場合には、この措置を回避して、クローラにより当該ウェブサイト内に掲載されている多数のデータを収集することにより、AI 学習のために当該データベースの著作物の複製等をする行為は、
……
本ただし書に該当し、法第 30 条の4による権利制限の対象とはならないことが考えられる。
「考え方」は、この整理について、反対の意見と、ただし書が及ぶ範囲を限る指摘も脚注に記録している8。
この点に関しては、この措置を回避して行う AI 学習のための複製等であっても、当該データベースの著作物の将来における潜在的販路を阻害する行為に当たるとは限らない、また、これに当たると評価される場合でも、本ただし書に該当すると解することは適切でないといった意見もあった。
当該データベースの著作物の将来における潜在的販路を阻害する行為に当たると評価される場合であっても、これに含まれる個々の著作物の将来における潜在的販路を阻害する行為に当たるとはいえず、当該個々の著作物との関係で本ただし書に該当するわけではない、とする指摘があった。
文化庁著作権課が2024年7月31日に公表した「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」は、権利者向けに次のように書いている9。
そのため、権利者としては、インターネット上に自らの作品を公開する場合、その作品を含んだAI学習用データベース(データセット)を、AI学習等の情報解析目的で販売(ライセンス提供)するようにしておくことで、無許諾で学習されることを法的に防ぐことが可能です。
また「考え方」は、学習データに含まれる作品の表現そのものを出力させる目的で追加の学習をする場合は、享受の目的もあることになり、30条の4が適用されないとしている8。
〔上記複製③・④に関して〕既存の学習済みモデルに対する追加的な学習(そのために行う学習データの収集・加工を含む)のうち、意図的に、学習データに含まれる著作物の創作的表現の全部又は一部を出力させることを目的とした追加的な学習を行うため、著作物の複製等を行う場合。
「反対の意思表示だけでは止められない」という点では、ページの記述は「考え方」と合う。しかし「考え方」とチェックリストは、30条の4が適用されない場合を示しており、著作者が学習を止める手段はないと一律に書く点は、これらの資料と合わない89。
ただし、データベースについての整理が当てはまるのは、技術的な措置に加えて販売の予定が推認されるなど、条件がそろう場合である。チェックリストの「防ぐことが可能」も、作品をデータベースとして販売(ライセンス提供)する場合の話である。個人の投稿者がこの条件にあるかは、資料からは分からない。上の脚注のとおり、データベースとの関係でただし書に当たっても、個々の作品との関係では当たらないとする指摘もある。なお「考え方」は、それ自体に法的な拘束力はないと冒頭で断っている8。
「AIによる生成物について定めたものではない」
経緯で示した段落で、ページは、生成物が合法か否かはただし書の一文の「解釈次第と言われていた」と書き、続けて「しかし、この条文は」と述べている。
「この条文」はただし書を指すと読める
直前の文は、ただし書の一文を引いて「という条文の解釈次第」と呼んでいる。これを受けた「この条文」は、ただし書を指すと読むのが自然である。ページが根拠とする山田議員の発言も、ただし書についての答弁を受けたものである(後述)。本項は、この読みに沿って照合する。30条の4全体を指すと読む場合に変わる点は、該当する節で述べる。
学習と生成・利用を分ける点は、2024年の「考え方」と合う
生成 AI との関係において著作物が利用される場面を概観すると、大きく「開発・学習段階」と「生成・利用段階」に分けられる。
生成 AI による生成物についても、その生成・利用段階において、既存の著作物との類似性及び依拠性が認められれば、当該既存の著作物の著作権者は、生成物の生成行為や利用行為が、既存の著作物の著作権侵害に当たるとして、当該行為の差止請求や損害賠償請求を請求し得る。
「考え方」は、著作物が使われる場面を「開発・学習段階」と「生成・利用段階」に分ける。30条の4が問題になるのは前者である。後者で生成物が著作権侵害になるかは、人が AI を使わずに作った場合と同じく、既存の作品との類似性(似ていること)と依拠性(既存の作品を知り、それをもとに作ったこと)で判断するとしている8。ただし書が生成物の適法性を決める規定ではない、という趣旨は「考え方」と合う。
ただし「考え方」は、二つの段階を完全に切り離してはいない。学習した作品と表現が共通する生成物が「著しく頻発する」といった事情は、学習の段階での享受の目的を推し量る一要素となり得るとしている。一方で、頻発が利用者の指示によるものなら、学習を行った事業者の享受の目的を推し量る要素にはならないとも注記している8。
なお、学習された著作物と創作的表現が共通した生成物の生成が頻発したとしても、これが、生成 AI の利用者が既存の著作物の類似物の生成を意図して生成 AI に入力・指示を与えたこと等に起因するものである場合は、このような事情があったとしても、AI 学習を行った事業者の享受目的の存在を推認させる要素とはならないと考えられる
「集めたデータセットを複製する場合」は、国会での議員の言い換えに沿っており、政府答弁の基準より狭い
ページが根拠とする山田太郎議員の動画は、題名によれば2023年3月29日の参議院「地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員会」での質疑である。本項は動画を視聴しておらず、同日の会議録で、山田議員の質疑とそれへの答弁(発言番号79〜100)をすべて読んだ4。30条の4についての文化庁の答弁は2件である。ただし書についての答弁は次のとおりである。
法三十条の四ただし書の著作権者の利益を不当に害することとなる場合といったものについては、それに該当するかどうかといったものは、著作権者の著作物の利用市場と衝突するか、あるいは将来における著作物の潜在的市場を阻害するかという観点から、最終的には司法の場で個別具体的に判断されることになろうかというふうに考えられます。
具体的には、平成三十年改正前の旧法四十七条の七のただし書におきまして、権利制限の対象外とされていました情報解析を行う者の用に供するために作成されたデータベースの著作物を情報解析目的で複製する行為等は、
……
この法三十条の四のただし書にも該当するというものであるというふうに考えております。
これを受けて、山田議員は次のように述べた。
これはどういうことを言っているかというと、AIに食べさせたデータセットというのがありますと、それについては重要なので権利を認めましょうと、これを勝手に誰かがコピーして使っちゃいけないよ、ちゃんと有償でもって譲りなさいねということを言っているのが今の部分なんですね。
結局、これも集めたデータセットをどうするのかという議論だけにとどまっている内容でありまして、実は吐き出したものというのがどうなのかというのは本当にまだまだ議論されていないと。
文化庁の答弁は、ただし書の判断基準を「利用市場と衝突するか」「潜在的市場を阻害するか」とし、情報解析用のデータベースを「具体的には」と例として挙げた。2019年の文化庁の「基本的な考え方」も、このデータベースを「例えば」として挙げている7。ただし書を「集めたデータセットを複製する場合について定めたもの」とする記述は、政府の答弁ではなく議員の言い換えに沿っており、答弁が示した基準より範囲が狭い。「明らかになった」とあるが、上の範囲の会議録で、政府がそのように述べた箇所は見当たらなかった。
「この条文」を30条の4全体と読む場合は、「集めたデータセットを複製する場合」は学習の段階の利用を言い換えたものと読める。その場合、この節の「範囲が狭い」という点は当てはまらず、「生成物について定めたものではない」は「考え方」と合う。
「想定していなかった」:同じ質疑で、文化庁は生成系 AI なども想定されていたと考えられると答弁している
しかし、当時の時点では2022年以降のようにAI生成モデルが一般に出回り生成物が大量に生産されることを想定していなかった。
審議会における議論の段階で想定されていたAIとしては、従来からAIの用途として挙げられておりました画像認識等の用途に用いられるAIのほか、生成系AIなどが想定されていたというふうに考えられます。
この答弁は、改正前の審議会の報告書と、知的財産推進計画2016の記述から推し量る形をとっている4。「考え方」も、改正の検討時に生成物を作る AI は既に存在していたと書く8。
いわゆる「柔軟な権利制限規定」が設けられた、平成 30 年の著作権法改正の検討時には、人間の指示により自律的に生成物を生成する AI は既に存在していた。
一方、山田議員は同じ質疑で、ページの記述に近い認識を述べている4。
問題はアウトプットのところなんですよね。
……
多分その議論というのが実際当時されていなかった。それはなぜかというと、昨今、生成系AIというのはこんなに進化すると思っていなかったから
答弁と「考え方」は、生成系 AI の存在や、検討の対象になっていたことを述べている。生成 AI が一般に広まり、生成物が大量に作られることまで想定していたとは述べていない。ページの記述は後者についてのもので、想定の対象が異なり、両立し得る。ただし、ページは同じ質疑にある文化庁の答弁に触れずに、想定していなかったことを事実として書いている。当時の審議の実態は、本項では審議会の報告書に当たっておらず、確認していない。
柿沼弁護士の記事は、学習と生成物の問題を分けて論じている
下記の山田太郎議員の動画が出てくる前には、生成AIによる著作物が合法か否かについて、「ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。」という条文の解釈次第と言われていた(上記引用の柿沼弁護士の見解もそう)。
あくまでここで適法としているのは「AIソフトウェアの生成行為」(論点1)であって、当該ソフトウェアを提供した結果、当該ソフトウェアを利用したユーザが既存著作物と同一・類似の著作物を生成して著作権侵害を起こした場合に、当該ソフトウェア提供者がどのような責任を負うか(論点3①)は別問題であるということです。
記事は、ただし書を AI ソフトウェアを作る行為(論点1)の限界として論じている。生成物が既存の作品の著作権を侵害するかは、別の論点(論点3)として類似性と依拠性で論じている3。生成物の適法性をただし書の解釈次第とする見解の例として柿沼弁護士の記事を挙げるのは、記事の論じ方と合わない。
「合法と判断することは過言」
「著作権法の一部を改正する法律 概要」にも記載のある通り、「著作物の市場に悪影響を及ぼさないビッグデータを活用したサービス等※のための著作物の利用について、許諾なく行えるようにする。」とした法改正であり、現状の画像生成AIの利用方法を合法と判断することは過言であると言わざるを得ない。
「市場に悪影響を及ぼさない」を、生成物の利用に当てはめる根拠が示されていない
・著作物の市場に悪影響を及ぼさないビッグデータを活用したサービス等※のための著作物の利用について、許諾なく行えるようにする。
ページが引く「概要」の文言は、文化庁の資料の原文と一致する5。ただし「概要」は改正の要約で、条文ではない。30条の4の条文には「市場に悪影響を及ぼさない」という要件はなく、要件は前半(享受を目的としないこと、必要と認められる限度であること)と、ただし書である2。「概要」の文は、文法の上では、許される利用を市場に悪影響のないものに限る言い方とも読める。
文化庁の資料は、この文言の位置づけを次のように説明している。「概要説明資料」は、30条の4を「権利者の利益を通常害さない行為類型」に当たるとして設けたとし、対応が求められていた新たなニーズの例に「AIによる深層学習」を挙げる6。
「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」に関する権利制限規定(新30条の4)(第1層)
……
〇第1層は、権利者の利益を通常害さない行為類型であることから、「柔軟性の高い規定」を整備。
「柔軟な権利制限規定」による対応が求められている新たなニーズの例
……
AIによる深層学習
2019年の「基本的な考え方」は、ただし書を置いた理由を次のように書く7。享受を目的としない行為の例の最初には、AI の学習用データの収集を挙げている。
これは,本条により権利制限の対象となる行為は,著作権者の利益を通常害するものではないと考えられるものの,
……
本条の権利制限の対象となる行為によって著作権者の利益が不当に害されることがないように定めているものである。
例えば,
・人工知能の開発に関し人工知能が学習するためのデータの収集行為,人工知能の開発を行う第三者への学習用データの提供行為(問11参照)
文化庁の資料の説明に沿えば、市場に悪影響がないというのは、享受を目的としない利用という類型について立法のときに示された見方である。個々の利用が著作権者の利益を不当に害する場合は、ただし書で除く仕組みになっている67。また、30条の4は学習の段階の規定である。ページは「概要」の文言を理由に挙げるが、条文と文化庁の解説には、この文言を生成物を作って使う段階に当てはめる根拠は見当たらない。
一方、ページの結論である、画像生成 AI の使い方を一律に合法とは言えないという点は、「考え方」の整理と矛盾しない。「考え方」によれば、生成物が既存の作品と類似し、それに依拠していれば、著作権侵害になり得る8。
「市場圧迫」:「考え方」は、作風が似るだけの生成物の大量生成はただし書に当たらないとし、反対の意見も記録している
ページは、2024年1月の文化審議会の小委員会(第6回)について「市場圧迫の問題」として X の投稿を載せている。この論点について「考え方」は次のように整理した8。
著作権法が保護する利益でないアイデア等が類似するにとどまるものが大量に生成されることにより、特定のクリエイター又は著作物に対する需要が、AI 生成物によって代替されてしまうような事態が生じることは想定しうるものの、当該生成物が学習元著作物の創作的表現と共通しない場合には、著作権法上の「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」には該当しないと考えられる。他方で、この点に関しては、本ただし書に規定する「著作権者の利益」と、著作権侵害が生じることによる損害とは必ずしも同一ではなく別個に検討し得るといった見解から、特定のクリエイター又は著作物に対する需要が、AI 生成物によって代替されてしまうような事態が生じる場合、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合」に該当し得ると考える余地があるとする意見が一定数みられた。
「考え方」は、作風などのアイデアが似るだけの生成物が大量に作られ、特定のクリエイターへの需要が奪われる事態は、ただし書には当たらないとした。ただし、ただし書に当たり得るとする意見が「一定数みられた」ことも併記している。小委員会の中でも見解が分かれた論点である。
2019年の文化庁資料の抜粋
上記参考資料、文化庁『デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方』より抜粋(原文まま)
抜粋は原文どおり。抜粋はデータベースの例を挙げる直前の文で終わっている
本条ただし書に該当するか否かは,著作権者の著作物の利用市場と衝突するか,あるいは将来における著作物の潜在的販路を阻害するかという観点から,最終的には司法の場で個別具体的に判断されることになる。例えば,現行法第47条の7のただし書の対象となっている「情報解析を行う者の用に供するために作成されたデータベースの著作物」の情報解析目的での複製については,本条ただし書により権利制限の対象から除外されるものと考えられる。
ページが「原文まま」として載せる2か所(6頁の問6、40〜41頁の「ただし書について」)を、文化庁の PDF と照合した7。改行の位置を除き、文面は原文と一致し、頁の表示も合っている。40〜41頁の抜粋は「判断されることになる。」で終わり、原文でその直後に続くデータベースの例(上の傍点部)は含まれていない。抜粋の区切りとしては不自然ではないが、この例は、前節で見た国会答弁の「具体的には」の例と同じものである。
情報の新しさ
2024年の文化庁の二つの資料に触れていない
ページの最終更新は2025年1月20日で、2024年3月と5月の X の投稿も載せている1。しかし、2024年3月の「考え方」8と、2024年7月の「チェックリスト&ガイダンス」9には触れていない。ページは2023年の政府の会議の資料から「今後検討が必要な事項」(どのような学習が著作権者の利益を不当に害するか、どのような生成物の利用が侵害に当たるか)を紹介している。これらの問いについて、「考え方」は一定の整理を示している。ページが紹介する文化庁の資料は、2018年の改正資料と2019年の「基本的な考え方」までである。
正しい部分
次の点は、原文・一次資料と合う。30条の4の条文の転載2、平成30年改正の「概要」の文言5、2019年の「基本的な考え方」の抜粋7は、いずれも原文どおりである。改正法の施行日(2019年1月1日)も合う5。30条の4のただし書が生成物の適法性を直接定めたものではなく、生成物の侵害は別に判断されるという趣旨は、「考え方」の整理と合う8。30条の4があるから画像生成 AI の使い方がすべて合法になるわけではない、という結論も、「考え方」と矛盾しない。反対の意思表示だけでは学習を止められないという点も、「考え方」と合う。
未確認の事項
- ページが STORIA法律事務所の記事を出典に挙げる3文(「2019年1月1日に施行された…」「止めることはできない」)が、どこから来たか。記事の現在の版と2023年4月6日の保存版には見当たらなかった。同事務所の他の記事や、別のサイトは網羅的には調べていない
- 山田太郎議員の動画の内容。動画は視聴しておらず、題名の日付と委員会名から、2023年3月29日の会議録と同じ質疑と判断した
- 平成30年改正の審議の段階で、生成 AI の普及がどの程度想定されていたか。文化審議会著作権分科会報告書(2017年4月)と知的財産推進計画2016は読んでいない
- 30条の4と生成 AI についての裁判所の判断。本項は判決・裁判例を調べていない。「考え方」は法的な拘束力を持たないと自ら断っている
- 個人の投稿者が、「考え方」のデータベースについての整理を使える条件にあるか。資料には個人の場合の具体例がない
- 2026年の著作権法改正(令和8年法律第48号)の内容。本項では、30条の4の条文が変わっていないことのみを e-Gov で確認した
- ページが紹介するその他の資料(知的財産戦略本部の構想委員会の資料、内閣府の資料、上野達弘教授の論文、CISAC・JIMCA の投稿)の内容。本項では照合していない
- ページの編集履歴。各記述がいつ、どの版で加えられたかはたどっていない
出典
- 「著作権法第三十条の四」 AI画像生成・生成系AI 問題まとめwiki(atwiki)、最終更新 2025年1月20日閲覧 2026年9月30日、本文のテキストを保存
- 著作権法(昭和45年法律第48号)第30条の4、2026年6月24日施行の版e-Gov 法令検索、閲覧 2026年9月30日、API で条文を保存
- 柿沼太一 「Midjourney、Stable Diffusion、mimicなどの画像自動生成AIと著作権」 STORIA法律事務所ブログ、2022年8月31日閲覧 2026年9月30日、本文と Wayback Machine の2023年4月6日の保存版を保存
- 第211回国会 参議院 地方創生及びデジタル社会の形成等に関する特別委員会 会議録、2023年3月29日(山田太郎委員の質疑と答弁、発言番号79〜100)閲覧 2026年9月30日、国会会議録検索システムの API で該当発言を保存
- 文化庁 「著作権法の一部を改正する法律 概要」(平成30年)閲覧 2026年9月30日、PDF を保存
- 文化庁 「著作権法の一部を改正する法律 概要説明資料」(平成30年)閲覧 2026年9月30日、PDF を保存
- 文化庁著作権課 「デジタル化・ネットワーク化の進展に対応した柔軟な権利制限規定に関する基本的な考え方」、2019年10月24日閲覧 2026年9月30日、PDF を保存
- 文化審議会著作権分科会法制度小委員会 「AIと著作権に関する考え方について」、2024年3月15日閲覧 2026年9月30日、PDF を保存
- 文化庁著作権課 「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」、2024年7月31日閲覧 2026年9月30日、PDF を保存
版の履歴
- 第1版 2026年9月30日 作成
本項は、AI(本版では Claude)が資料の収集・照合と草稿の作成を行った。編集担当による原典との照合は、本版では未実施である。