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「日本における著作権問題」(Wikipedia「Stable Diffusion」)

第1版・2026年9月30日・出典10件・レビュー未実施

目次
  1. 経緯
  2. 条文と照らし合わせる
  3. 「不明瞭」とされた基準と2024年の考え方
  4. 改正の経緯と関係団体の意見
  5. 未確認の事項
  6. 出典
  7. 版の履歴

日本語版 Wikipedia「Stable Diffusion」の節「日本における著作権問題」を 1 文ずつ、著作権法の条文、文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)などの一次資料と照らし合わせる。

対象の記述

Stable Diffusionの登場に関連して、日本においては2018年に成立した改正著作権法が問題視されている。この30条4項では人工知能の訓練データに文章や画像を利用する場合に、営利・非営利を問わず著作物を利用できることを定めており、先進国で最も緩い法規制の枠組みになっている。

照合の結果

2018年の成立、営利・非営利を問わないこと、AI の学習は原則として利用できること、ワーキングチームの構成は一次資料と合う。一方で、条文の番号(「30条4項」)が誤っており、例外(作品を楽しむ目的が含まれる場合など)と2024年に文化庁の考え方が示した具体例が書かれていない。「先進国で最も緩い」「リスクは十分に説明されなかった」は誰の見解かが示されておらず、アンケートの「94.1%」は公表された最終集計(93.8%)と一致しない。

経緯

日本語版 Wikipedia の記事「Stable Diffusion」は、第4章「用途と論争、訴訟」の節 4.1「著作権」の下に、節 4.1.1「日本における著作権問題」を置いている(版番号 111086300、2026年9月20日の版。9月30日時点の最新版)1。節は2段落・8文からなる。第1段落は2018年の著作権法改正の内容と経緯を、第2段落は関係団体の懸念を書いている。以下、文ごとに原文を引用して照らし合わせる。

出典は2段落とも『読売新聞』2023年5月16日朝刊1・2面の1本だけである19。本項はこの記事を閲覧できていない(未確認の事項)。

版の履歴によると、この2段落は2023年5月30日の編集で、節名「日本における著作権法の問題」として加筆された2。その後、節名は変わった。現在の版の本文は、加筆時の文言と同じである12。文化庁の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)4と「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(2024年7月)5は、この加筆より後に出ている。

なお、情報解析のための複製を認める規定は、2018年の改正より前の2009年の改正で既に設けられていた(旧第47条の7)6。

条文と照らし合わせる

第1段落の最初の2文は次のとおりである。この節では、傍点の3か所を順に扱う。

Wikipedia「Stable Diffusion」より 4.1.1 日本における著作権問題(2026年9月30日閲覧)

Stable Diffusionの登場に関連して、日本においては2018年に成立した改正著作権法が問題視されている。この30条4項では人工知能の訓練データに文章や画像を利用する場合に、営利・非営利を問わず著作物を利用できることを定めており、先進国で最も緩い法規制の枠組みになっている。

「30条4項」という規定はない。該当するのは第30条の4である

著作権法の第30条(私的使用のための複製)は3項までで、4項はない3。情報解析のための利用を定めるのは、別の条である第30条の4(著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用)である3。「30条4項」は「30条の4」の誤りである。「2018年に成立した」は正しい。第30条の4を設けた改正法は、2018年5月18日に成立し、2019年1月1日に施行された4。

「営利・非営利を問わず」は条文と合い、学習は原則として利用できる点も文化庁の考え方と合う。ただし例外が書かれていない

第30条の4は、利用する者が営利か非営利かで区別していない3。また、文化庁の考え方は、AI の学習を含む情報解析は、原則として条文の「享受」(作品を見たり聞いたりして楽しむこと)を目的としない利用にあたり、許諾なく行えるとしている4。学習のために著作物を原則として利用できるという記述の大筋は、条文と文化庁の考え方に合う。

一方、条文が利用を認めるのは、「当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合」で、「その必要と認められる限度において」である3。考え方は、目的の中に一つでも「享受」の目的があれば、第30条の4は適用されないとする4。例として挙げるのは、次のような場合である45。

  • 学習した作品の表現そのものを出力させるために、意図的に追加の学習を行う場合(意図的な「過学習」。学習データを丸ごと覚え込ませること)
  • 特定のクリエイターの少量の作品だけで追加の学習(LoRA など、既存のモデルに少量のデータで追加の学習をさせる手法)を行い、その作品の表現を出力させることを目的とする場合
  • 検索した文書を生成 AI の回答に使う仕組み(RAG)のために、既存の作品の表現を出力させる目的でデータベースを作る場合

記述は、こうした例外があることを書いていない。

「先進国で最も緩い」は、誰の見解か、何を基準にしたかが書かれていない

文化庁の事務局がまとめた各国の規定(2025年9月時点)は次のとおりである7。EU は、営利目的を含む情報解析を許諾なく行えるとするが、権利者は機械が読み取れる方法で利用を拒否できる(オプトアウト)。英国の同種の規定は、非営利の研究に限られる。米国は個別の規定を置かず、「フェア・ユース」の四つの要素で事案ごとに判断する。日本の第30条の4には、条文上、権利者が利用を拒否する仕組みはない3。ただし文化庁の考え方は、robots.txt(ウェブサイトが収集プログラムのアクセスを制限するための設定ファイル)などで学習用の収集を拒否し、かつ学習用データベースの販売が予定されていると推認できる場合には、例外にあたりうるとする4。

各国の規定は、許諾なしに使える範囲、権利者が拒否できるか、例外の設け方など、いくつもの点で異なる。「緩い」の順位は、どの点を比べ、どの国を含めるかで変わりうる。記述は「先進国で最も緩い」を、誰の見解か、何を基準にしたかを示さずに、事実として書いている。出典の読売新聞がそう書いたのか、加筆者の要約なのかも、本項では確かめられていない。

「不明瞭」とされた基準と2024年の考え方

「不明瞭である」は、2024年に文化庁の考え方が示した具体例に触れていない。ただし考え方も、最終的な判断は裁判所によるとしている

Wikipedia「Stable Diffusion」より 4.1.1 日本における著作権問題(2026年9月30日閲覧)

「著作権者の利益を不当に害する場合」は利用できないとしているが、その具体的にどのようなケースに該当するかは不明瞭である。

第30条の4には、「著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない」という例外の定め(ただし書)がある3。この定めがあるという記述は、条文と合う(記述の「不当に害する場合」は、条文では「不当に害することとなる場合」)。

この記述が加筆された後の2024年3月、文化審議会著作権分科会法制度小委員会の「AIと著作権に関する考え方について」は、この例外にあたる例を次のように示した4。文化庁のチェックリスト&ガイダンス(2024年7月)も同じ内容を整理している5。

  • 情報解析用に整理して販売されているデータベースの著作物を、AI の学習のために無断で複製する場合は、例外にあたる
  • robots.txt や ID・パスワードで学習用の収集を拒否しており、過去の実績などから学習用データベースの販売が予定されていると推認できる場合に、その措置を回避して収集・複製することは、例外にあたりうる
  • 拒否の意思を示しただけでは、例外にはあたらない
  • 作風や画風が似ているだけの生成物が大量に作られることは、原則として例外にはあたらない。ただし、あたりうるとする意見が小委員会に一定数あったことも記録されている

一方で、考え方は自らについて「法的な拘束力を有するものではな」いとし、著作権法の解釈は本来「個別具体的な事案に応じた司法判断によるべきもの」としている4。考え方が示した例も、最終的には裁判所の判断に委ねられる。その意味で、線引きがなお定まりきっていないという読みは成り立つ。ただし、「具体的にどのようなケースに該当するか」について文化審議会の小委員会と文化庁が例を示したことは、記述に書かれていない。

改正の経緯と関係団体の意見

「リスクは十分に説明されなかった」は、誰の見解かを示さずに事実として書いている

Wikipedia「Stable Diffusion」より 4.1.1 日本における著作権問題(2026年9月30日閲覧)

法改正に当たっては一部の弁護士や大学教授らで構成されたワーキングチームが主導したが、そのリスクは十分に十分に説明されなかった。『読売新聞』の取材によれば、権利者団体から権利侵害を前提としたビジネスモデルへの懸念が示されたが、ワーキングチームはリスクは「ゼロか軽微」と説明した。

文化審議会著作権分科会の報告書(2017年4月)によると、法制・基本問題小委員会の下に「新たな時代のニーズに的確に対応した制度等の整備に関するワーキングチーム」が置かれ、検討を行った。2015年度(第15期)の委員は、弁護士、大学教授、法務省の担当者、東京地方裁判所の判事(知的財産担当)である6。「弁護士や大学教授らで構成されたワーキングチーム」は、報告書の名簿と合う。同じ報告書によると、ワーキングチームは2016年に、日本音楽著作権協会(JASRAC)、日本書籍出版協会、学術著作権協会などの権利者団体から意見を聴いている6。

報告書は、利用の類型を「権利者の利益を通常害さない」もの(第1層)と「権利者に及び得る不利益が軽微な」もの(第2層)などに分けた。2018年の改正では、第1層に対応する規定の一つとして第30条の4が設けられた46。ただし、報告書に「ゼロ」という語は見つからない6。記述が読売新聞の取材として伝える「ゼロか軽微」が、この二つの層を言い換えたものである可能性はあるが、推定にとどまる。この言葉がワーキングチームの発言なのか、読売新聞による言い換えなのかも、記事を確認できていないため区別できない。

二つ目の文は「『読売新聞』の取材によれば」と情報の出どころを示している。一方、一つ目の文の「そのリスクは十分に…説明されなかった」は、説明が十分だったかという評価を、誰の見解かを示さずに事実として書いている。

アンケートの「94.1%」は、公表された最終集計(93.8%)と一致しない。設問は法律の規定について問うものではない

Wikipedia「Stable Diffusion」より 4.1.1 日本における著作権問題(2026年9月30日閲覧)

この著作権法の規定に多くの漫画家、イラストレーター、音楽家、俳優、芸能人、出版社が懸念を示しており、俳優や音楽家らで結成された日本芸能従事者協会はアンケートを実施し、94.1%がAIによる権利侵害に懸念を示し、「創作者の尊厳が軽んじられないような法制度」を求める意見などが表明された。

日本芸能従事者協会が公表した集計結果によると、調査は2023年5月8日から28日にインターネットで行われ、回答は全体で26,891件である8。該当する設問は「AIによる権利侵害などの弊害に不安がありますか」で、この設問への回答26,831件のうち「不安」が93.8%、「不安はない」が4.1%、「わからない」が2.1%である8。公表されている最終集計は93.8%で、記述の94.1%とは一致しない。出典の読売新聞の記事(5月16日)は調査期間の途中に出ている。94.1%が途中の集計の値であれば、誤りではなく集計の時点の違いである。本項では、どちらかを確認できていない。

「AIによる権利侵害に懸念」という言い方自体は、設問の内容と合う。ただし設問は AI による権利侵害などの弊害一般への不安を問うもので、著作権法の特定の規定について問うものではない8。「この著作権法の規定に…懸念を示しており」に続けてこの数値を置くと、第30条の4への懸念の割合のように読めるが、設問はそうなっていない。回答者は協会の呼びかけに応じた人で、無作為に選ばれてはいない。「創作者の尊厳が軽んじられないような法制度」という文言は、本項では確認できなかった。

JASRAC の主張の「情報分析サービス」が、どの規定に向けたものかは確かめられない

Wikipedia「Stable Diffusion」より 4.1.1 日本における著作権問題(2026年9月30日閲覧)

日本音楽著作権協会も、「営利目的で行われる情報分析サービスまで権利制限の対象とすることは不当」であると主張した。

この文は、日本音楽著作権協会の主張として書かれている。

2017年の報告書で「情報分析サービス」は、評判情報の分析や論文の剽窃検出のように、大量の情報を解析して結果を提供するサービスを指す語として使われている6。報告書は、その準備としてのデータベースの作成を第1層に、結果を提供する際の著作物の一部の表示を第2層に位置づけている6。第2層に対応して設けられたのは第47条の5(情報処理の結果の提供に付随する軽微な利用)である4。本項は JASRAC の発言の原文を確認できていない。発言が生成 AI の学習(第30条の4)を念頭に置いたものか、解析結果の提供(主に第47条の5)に向けたものかは、確かめられない。

出版関係団体の回答は、団体の回答として書かれており、報告書の内容とも矛盾しない

Wikipedia「Stable Diffusion」より 4.1.1 日本における著作権問題(2026年9月30日閲覧)

主要な出版社で作る日本書籍出版協会、学術論文の著作権を管理する学術著作権協会も改正当時は生成AIを前提とした説明が行われなかったと回答している。

この文は「回答している」と、団体の回答であることを示している。2017年の報告書の本文を検索すると、AI の深層学習に触れるのは、旧第47条の7 の要件についての脚注1か所で、生成 AI による画像や文章の生成を前提にした記述は見つからなかった6。団体の回答は、報告書の内容と矛盾しない。一方、文化庁の考え方は、2018年の改正の検討時に「人間の指示により自律的に生成物を生成する AI は既に存在していた」と書いている4。国会審議やワーキングチームの議事録は、本項では確認していない。

未確認の事項

  • 出典の『読売新聞』2023年5月16日朝刊1・2面の本文。オンライン版・英字版を含めて見つけられず、閲覧していない。「先進国で最も緩い」「リスクは十分に説明されなかった」「ゼロか軽微」がこの記事の記述か、加筆者の要約かは確かめていない
  • 「ゼロか軽微」がワーキングチームの発言か、読売新聞の言い換えか
  • 「94.1%」の出所。日本芸能従事者協会のサイトで、途中の集計を公表した資料は見つけられなかった
  • 「創作者の尊厳が軽んじられないような法制度」という文言の出所
  • JASRAC の「営利目的で行われる情報分析サービスまで権利制限の対象とすることは不当」の原文と、それがどの規定に向けたものか
  • 2018年改正時の国会審議と、ワーキングチームの議事録・ヒアリングで、リスクや生成 AI がどう説明されたか
  • 2026年9月時点での、生成 AI の学習と第30条の4 についての国内の裁判例の有無。本項では調べていない
  • 文化庁の資料にない国(シンガポールなど)の規定

著作権法は2026年6月にも改正された(令和8年法律第48号)が、内容は商業用レコードの公開再生などに関する二次使用料で、第30条の4 と第47条の5 は改正されていない310。

出典

  1. 「Stable Diffusion」 日本語版 Wikipedia、版番号 111086300(2026年9月20日)閲覧 2026年9月30日、節 4.1「著作権」の wikitext を保存
  2. 「Stable Diffusion」の版 95420802 での差分 日本語版 Wikipedia、2023年5月30日閲覧 2026年9月30日、API(action=compare)で追加箇所を確認
  3. 著作権法(昭和45年法律第48号)第30条・第30条の4・第47条の5e-Gov 法令検索、閲覧 2026年9月30日(令和8年法律第48号による改正の版)
  4. 文化審議会著作権分科会法制度小委員会 「AIと著作権に関する考え方について」、2024年3月15日閲覧 2026年9月30日、PDF を保存
  5. 文化庁著作権課 「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」、2024年7月31日閲覧 2026年9月30日、PDF を保存
  6. 「文化審議会著作権分科会報告書」、2017年4月閲覧 2026年9月30日、PDF を保存
  7. 文化庁著作権課 「生成AIをめぐる最新の状況について」(資料4)、2025年9月11日閲覧 2026年9月30日、PDF を保存。各国の規定は同資料の「事務局調べ」
  8. 日本芸能従事者協会 「全クリエイター実態調査アンケート10 AIリテラシー(集計結果)」、2023年6月8日閲覧 2026年9月30日、英語版 PDF を保存(日本語版 PDF はテキスト抽出できず、設問の図は英語版で確認)
  9. 『読売新聞』2023年5月16日 朝刊 1・2面(Wikipedia の記述の出典)未閲覧。閲覧 2026年9月30日時点でオンライン上に同じ記事を見つけられなかった
  10. 「著作権法の一部を改正する法律案」議案情報 参議院、第221回国会閲覧 2026年9月30日

版の履歴

  • 第1版 2026年9月30日 作成

本項は、AI(本版では Claude)が資料の収集・照合と草稿の作成を行った。編集担当による原典との照合は、本版では未実施である。