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「生成AIは何が問題なのか?」(atwiki「AI画像生成・生成系AI 問題まとめwiki」)
目次
atwiki「AI画像生成・生成系AI 問題まとめwiki」のページ「生成AIは何が問題なのか?」は、生成 AI の問題を総合的にまとめたページである。そのうち、学習データに個人データが使われていることをめぐる各国当局の措置と訴訟などの記述8件を、当局の発表、裁判記録、法律案の資料と照合する。
対象の記述
この個人データを生成AI開発に無断で利用している事(またはその疑惑に対し)、各国機関による指導や個人による訴訟も起きている。
照合の結果
取り上げた8件の出来事は、当局の発表、裁判記録、法案の資料、報道で確かめられた(ブラジルはウェブ保存版、オーストラリアは第三者のサイトに置かれた報告書の写し、医療記録の件は報道に依る)。DeepSeek、ブラジル、オーストラリア、医療記録の写真、OpenAI への提訴、日本の法案(統計作成に限った同意の例外と課徴金)についての記述は資料と合う。イタリア当局の2023年の命令の主文は「処理の一時制限」だが、当局は発表で「ChatGPT を止める」とも書いている。一方、Meta が欧州での計画を「中止」したという記述は、Meta の発表(延期)や DPC の声明(一時停止)と異なる。OpenAI と LinkedIn への訴訟が、違法かどうかの判断が出ないまま取下げで終わったこと、日本の改正法が公布されたことは、ページに書かれていない。
経緯
atwiki「AI画像生成・生成系AI 問題まとめwiki」のページ「生成AIは何が問題なのか?」は、最終更新が2025年10月5日で、2026年9月30日の閲覧時に 13,360 view と表示されている1。本文は、生成 AI の問題を14の章に分けて解説する。
冒頭の【0. はじめに】は、問題を三つの傾向に分けて整理している。
生成AIの問題点はおおむね以下の3つの傾向に分類可能である。
①:無断利用である事による問題。(主に開発時の問題)
②:誰でも簡単にある程度のクオリティを持つコンテンツが作れ、なおかつ大量生産できる事による問題。(主に利用時の問題)
③:その他の問題。
これは問題の整理の仕方であり、本項では事実の照合の対象にしない。
続く【1. 生成AI開発時のデータ収集に関する問題】は、データの無断利用を「個人に関するデータ」「ポルノコンテンツなど不適切データ」「クリエイター・権利者が権利を有するデータ」の三つに分ける。本項では、このうち「個人に関するデータ」の節から、各国の当局の措置と訴訟を述べた記述を取り上げる。いずれも脚注で報道記事を出典に挙げている1。本項では、報道のもとになった当局の発表や裁判記録に当たった。
ページの各記述がいつ書かれたかは、版の履歴を確認していないためわからない。以下で「ページに書かれていない」とするのは、2026年9月30日に閲覧した記述に含まれていないという意味である。
イタリア当局と OpenAI(2023〜2024年)
EU には、個人データの扱いを定めた一般データ保護規則(GDPR)がある。各国のデータ保護当局が、これに基づいて企業を監督する。
当局が「サービス提供を一時中止するよう命じた」とする
2023年3月、イタリアの個人データ保護当局(GPDP)が、OpenAIに対し学習データにオンラインで共有されている個人情報が含まれていると指摘、EUの個人情報の取扱いに関する規制「一般データ保護規則(GDPR)」に違反したとして同国内でのサービス提供を一時中止するよう命じた。*10これを受けOpenAIは個人情報削除プラットフォームを設けるなどの対策を実施し4月末にサービス提供を再開。しかし、GDPR違反の疑惑に基づく捜査は継続しており、2024年1月にイタリアはGDPR違反を通知した。*11
The Italian SA imposed an immediate temporary limitation on the processing of Italian users’ data by OpenAI, the US-based company developing and managing the platform.
In its order, the Italian SA highlights that no information is provided to users and data subjects whose data are collected by Open AI; more importantly, there appears to be no legal basis underpinning the massive collection and processing of personal data in order to ‘train’ the algorithms on which the platform relies.
イタリアの監督機関は、プラットフォームを開発・運営する米国企業 OpenAI による、イタリアの利用者のデータの処理について、即時の一時的な制限を課した。
命令の中で監督機関は、OpenAI がデータを集めている人々に情報が提供されていないこと、さらに重要な点として、アルゴリズムを「訓練」するために個人データを大量に集めて処理することを支える法的根拠がないとみられることを指摘している。
イタリアの個人データ保護当局(Garante、ページの表記では GPDP)は、理由の一つとして、学習のために個人データを大量に集める法的な根拠がないとみられることを挙げている2。命令の本文を見ると、主文が命じているのは、イタリア国内の人々の個人データの処理の一時的な制限である22。主文には、サービスの提供を止めるよう命じる文言はない。
a) ai sensi dell’art. 58, par. 2, lett. f), del Regolamento dispone, in via d’urgenza, nei confronti di OpenAI L.L.C., società statunitense sviluppatrice e gestrice di ChatGPT, in qualità di titolare del trattamento dei dati personali effettuato attraverso tale applicazione, la misura della limitazione provvisoria, del trattamento dei dati personali degli interessati stabiliti nel territorio italiano;
a) (当局は)規則(GDPR)58条2項(f)に基づき、ChatGPT を開発・運営する米国企業 OpenAI L.L.C. に対し、同アプリで行われる個人データの処理の管理者として、イタリア国内に所在する人々の個人データの処理の一時的な制限の措置を、緊急に命じる。
Intelligenza artificiale: il Garante blocca ChatGPT
Stop a ChatGPT finché non rispetterà la disciplina privacy.
人工知能:当局が ChatGPT を止める
(本文の第1文)プライバシーの規律を守るまで ChatGPT は停止。
一方で当局は、同じ発表の見出しで「ChatGPT を止める」と書き、本文の第1文も「Stop a ChatGPT」(ChatGPT は停止)で始めている2。2024年の英文の発表では、この命令を「temporary ban on processing」(処理の一時的な禁止)と呼び、同じ発表のイタリア語版は「limitazione provvisoria del trattamento」(処理の一時的な制限)と書いている4。実際に ChatGPT をイタリアで使えなくしたのは OpenAI で、ページが出典に挙げる WIRED の記事もそう書いている18。ページの「サービス提供を一時中止するよう命じた」は、命令の主文の文言(処理の制限)とは異なる。一方、当局の発表の見出しと、OpenAI がサービスを止めたという結果とは合っている。
Alla luce di questi miglioramenti OpenAI ha reso nuovamente accessibile ChatGPT agli utenti italiani.
こうした改善を受け、OpenAI は ChatGPT をイタリアの利用者に再び利用できるようにした。
4月28日の発表によると、OpenAI は、学習への利用に異議を申し立てるフォームを設け、誤った情報の削除を求められるようにした3。「対策を実施し4月末にサービス提供を再開」は、発表と合う。
「2024年1月にイタリアはGDPR違反を通知した」とする
Following the temporary ban on processing imposed on OpenAI by the Garante on 30 March of last year, and based on the outcome of its fact-finding activity, the Italian DPA concluded that the available evidence pointed to the existence of breaches of the provisions contained in the EU GDPR.
OpenAI may submit its counterclaims concerning the alleged breaches within 30 days.
昨年3月30日に当局が OpenAI に課した処理の一時禁止に続き、事実調査の結果に基づいて、当局は、入手した証拠が EU の GDPR の規定への違反の存在を示していると結論づけた。
OpenAI は、違反とされた点について30日以内に反論を提出できる。
A seguito del provvedimento di limitazione provvisoria del trattamento, adottato dal Garante nei confronti della Società lo scorso 30 marzo
昨年3月30日に当局が同社に対して出した、処理の一時的な制限の命令に続き
この記述は当局の発表と合う4。ただし、発表は「alleged breaches」(違反とされる点)と書き、OpenAI に30日以内に反論する機会を与えている4。この時点では違反の認定は確定していない。
ページは、その後の経過を書いていない。当局は2024年12月、OpenAI に1500万ユーロの制裁金を科したと発表した5。この発表には、のちに注記が付けられている。
*Decision No. 755 of 2 November 2024 has been temporarily removed from the website of the Italian Data Protection Authority following judgment No. 4153/2026 of the Court of Rome. The judgment, published on 18 March 2026, upheld the appeal lodged against the Authority’s decision
The Data Protection Authority imposed a fine of EUR 15 million on OpenAI, which was also calculated taking into account the company’s cooperative attitude.
*2024年11月2日の決定第755号は、ローマ地方裁判所の判決第4153/2026号を受けて、当局のウェブサイトから一時的に削除されている。2026年3月18日に公表されたこの判決は、当局の決定に対する不服申立てを認めた。
当局は OpenAI に1500万ユーロの制裁金を科した。額の算定にあたっては同社の協力的な姿勢も考慮した。
注記によると、ローマの裁判所は2026年3月に公表した判決で、当局の決定(2024年11月2日の第755号)に対する異議申立てを認めた5。判決の本文は読んでいない。誰が申し立てたか、決定のどの部分が対象か、違反の認定がいまも有効かは確認していない。
イタリア当局と DeepSeek(2025年1月)
「データ収集の目的やAI学習データの内容が不透明な事などを理由として」処理を制限したとする
また、イタリアは2025年1月に中国のAIモデルDeepseekに対しても、個人データ収集の目的やAI学習データの内容が不透明な事などを理由としてデータ処理を制限し調査を開始すると明らかにした。*12
The limitation order - imposed to protect Italian users’ data - follows the companies’ communication received today, whose content was deemed entirely unsatisfactory.
Contrary to what was found by the Authority, the companies declared that they do not operate in Italy and that European legislation does not apply to them.
イタリアの利用者のデータを守るために課したこの制限命令は、本日受け取った両社からの回答を受けたもので、その内容はまったく不十分と判断された。
当局の認識に反して、両社はイタリアで事業を行っておらず、欧州の法令は適用されないと述べた。
当局は1月28日、DeepSeek の運営会社2社に、収集する個人データ、その目的、AI の訓練に使う情報などを尋ねた6。2日後、回答が「まったく不十分」だったとして処理の制限を命じ、調査を開始した7。処理の制限と調査の開始は発表と合う。目的や学習データの中身がわからないことが背景にあるという説明も、照会の内容とおおむね合う。発表が直接の理由として挙げたのは、会社側の回答が不十分だったことと、会社側が「イタリアで事業を行っておらず、欧州の法令は適用されない」と答えたことである7。
Meta の欧州での計画(2024年)
Meta が欧州での計画を「中止した」とする
Metaは2024年5月にプライバシーポリシーを更新し、Metaが運営するSNS(フェイスブック、インスタグラム、スレッズ等)に投稿されたデータをAIの学習データに利用すると発表。この発表に対し、アイルランドやイギリスのデータ保護機関などがユーザーのコンテンツを利用する事について一時停止するよう求めた。Metaは「ヨーロッパでのイノベーションやAI開発競争、人々へAIの恩恵をもたらすことの更なる遅れにつながる」と批判しつつも、ヨーロッパにおける計画を中止した。 *13
We’re disappointed by the request from the Irish Data Protection Commission (DPC), our lead regulator, on behalf of the European DPAs, to delay training our large language models (LLMs) using public content shared by adults on Facebook and Instagram — particularly since we incorporated regulatory feedback and the European DPAs have been informed since March. This is a step backwards for European innovation, competition in AI development and further delays bringing the benefits of AI to people in Europe.
当社の主たる監督機関であるアイルランド・データ保護委員会(DPC)が、欧州のデータ保護当局を代表して、Facebook と Instagram で成人が共有した公開コンテンツを使った大規模言語モデルの訓練を延期するよう求めたことを残念に思う。当社は規制当局の意見を取り入れ、欧州の当局には3月から説明してきた。これは欧州のイノベーションと AI 開発の競争にとって後退であり、欧州の人々に AI の恩恵を届けることをさらに遅らせる。
The DPC welcomes the decision by Meta to pause its plans to train its large language model using public content shared by adults on Facebook and Instagram across the EU/EEA. This decision followed intensive engagement between the DPC and Meta.
DPC は、EU・EEA 全域で Facebook と Instagram に成人が共有した公開コンテンツを使って大規模言語モデルを訓練する計画を一時停止するという Meta の決定を歓迎する。この決定は、DPC と Meta の集中的なやりとりを経たものである。
Meta は、アイルランドのデータ保護委員会(DPC。EU での Meta の主な監督機関)が、欧州の当局を代表して訓練の延期を求めたと説明している8。DPC の声明は、Meta の一時停止の決定を歓迎すると書くだけで、自らが求めたとは書いていない9。英国の監督機関(ICO)については、Meta の発表が「具体的な要請」を受けたと書いているが、その中身は確認できていない8。ページが引く Meta の批判の言葉は、発表の文とほぼ同じである8。
Meta の発表は「延期(delay)」、DPC の声明は「一時停止(pause)」と書いており、どちらも「中止」とはしていない89。ページが出典に挙げる GIGAZINE の記事の見出しも「一時停止」である19。Meta は2025年4月、EU で成人が共有した公開コンテンツを使った訓練を始めると発表した10。実際に訓練を始めた日は確認していない。
Last year, we delayed training our large language models using public content while regulators clarified legal requirements. We welcome the opinion provided by the EDPB in December, which affirmed that our original approach met our legal obligations.
昨年、当社は規制当局が法的要件を明確にするまでの間、公開コンテンツを使った大規模言語モデルの訓練を延期した。12月に EDPB(欧州データ保護会議)が示した意見は、当社の当初の方法が法的義務を満たしていたことを確認するものであり、これを歓迎する。
また、Meta と DPC の発表によると、訓練の対象は Facebook と Instagram に成人が公開で共有したコンテンツである89。ページの「Metaが運営するSNS(フェイスブック、インスタグラム、スレッズ等)に投稿されたデータ」という書き方からは、対象が限られていることが伝わらない。
ブラジルとオーストラリア(2024年)
ブラジルの ANPD が「利用の停止を求めた」、オーストラリア議会で「2007年以降」の投稿の利用が判明したとする
ヨーロッパ圏以外でも生成AIトレーニングにおける個人データの無断利用は問題視されている。ブラジルでは、先述したMetaが運営するSNSのユーザー投稿データをAIのトレーニングに利用するという2024年6月の発表に対し、同国のデータ保護機関ANPDが利用の停止を求めた*16。オーストラリアでも、2024年9月に行われた議会の公聴会で、2007年以降にMeta運営のSNSへ投稿されたユーザーデータを利用していることが同社の担当者への質問で判明している。(ただしオーストラリアにはEUのような強力な個人情報保護の法律がないため対応が難しいとされている)*17
A Autoridade Nacional de Proteção de Dados (ANPD) emitiu hoje (2) Medida Preventiva determinando a imediata suspensão, no Brasil, da vigência da nova política de privacidade da empresa Meta, que autorizava o uso de dados pessoais publicados em suas plataformas para fins de treinamento de sistemas de inteligência artificial (IA). Foi estabelecida multa diária de R$ 50 mil por descumprimento.
国家データ保護機関(ANPD)は本日(2日)、Meta 社の新しいプライバシーポリシーのうち、同社のプラットフォームに公開された個人データを人工知能(AI)システムの訓練に使うことを認める部分について、ブラジル国内での効力を直ちに停止するよう命じる予防措置を出した。違反には1日5万レアルの過料を定めた。
ブラジルについての記述は、国家データ保護機関(ANPD)の発表と合う11。ANPD は2024年7月2日、6月26日に発効した Meta の新しいプライバシーポリシーのうち、AI の訓練に関わる部分の効力を停止するよう命じた。ページは「求めた」と書くが、実際には違反に1日5万レアルの過料を伴う命令である11。
While Meta confirmed that it has used user content from Facebook and Instagram published since 2007 to train its AI models, provided the content had a privacy setting of ‘public’, it did not answer questions about whether it also used user content from the private messaging applications Messenger and WhatsApp.
Meta は、2007年以降に Facebook と Instagram に投稿された利用者のコンテンツを、公開設定であることを条件に AI モデルの訓練に使ってきたことを認めた。一方、非公開のメッセージアプリ Messenger と WhatsApp の利用者コンテンツも使ったかどうかという質問には答えなかった。
オーストラリアについての記述も、上院の特別委員会の報告書と合う12。報告書によると、Meta は2007年以降の Facebook と Instagram の投稿を AI の訓練に使ったことを認めた。ただし、対象は公開設定の投稿に限られる。ページの「投稿されたユーザーデータ」という書き方からは、この限定が伝わらない。
米国の訴訟(OpenAI、LinkedIn)
提訴したことだけを書き、判決に至らずに終わったことを書いていない
アメリカでは、2023年6月に個人情報を同意なく取得しておりプライバシー法に違反しているとして、OpenAIが匿名の個人複数人から提訴された*18*19。2025年1月には、米ビジネス向けSNS「LinkedIn」の運営を被告として、同社が無断でプライベートな電子メールの一部を複数の第三者に開示したのは違法であるとして、LinkedInのユーザーが訴訟を提起した。これに対しLinkedInは、「根拠のない主張だ」と争う姿勢を見せている。*20
OpenAI への訴訟(P.M. v. OpenAI)は、2023年6月28日に北カリフォルニア連邦地裁に提起された。原告は16人で、いずれもイニシャルで表記されている13。「匿名の個人複数人から提訴された」は裁判記録と合う。原告側は2023年9月15日、再提起を妨げない形で訴えを取り下げた13。ページはこの取下げを書いていない。
hereby voluntarily dismiss this case without prejudice.
(原告らは)本件訴訟を、再提起を妨げない形で任意に取り下げる。
同じ原告側の法律事務所(Clarkson Law Firm)は、2023年9月5日に OpenAI などを相手に別の訴訟(Cousart v. OpenAI)を起こしている21。裁判所は2024年5月、訴状が長すぎ、関係のない主張が多いことを理由に、被告の棄却申立てを認めた。訴状を直して出し直す機会は与えたが、原告は出し直さないと通知し、6月27日に判決が出て事件は終わった21。
The plaintiffs’ first amended complaint, which spans almost 200 pages, fails to present “a short and plain statement” showing the plaintiffs are entitled to relief.
原告らの修正訴状は200頁近くに及び、原告らが救済を受ける資格があることを示す「簡潔で平明な記述」になっていない。
LinkedIn への訴訟(De La Torre v. LinkedIn)の訴状が問題にしたのは、有料会員が LinkedIn 上で送る「InMail」という非公開のメッセージである14。ページの「プライベートな電子メール」は、電子メールではなく LinkedIn 内のメッセージである。ページの出典(ロイター)は読めておらず、この語が出典に由来するかはわからない。
B. LinkedIn Unlawfully Disclosed its Premium Customers’ Private InMail Messages
B. LinkedIn は、プレミアム会員の非公開の InMail メッセージを違法に開示した
原告は提訴から9日後の2025年1月30日に、再提起を妨げない形ですべての請求を取り下げた14。ページは LinkedIn が「争う姿勢を見せている」と書いており、取下げは書かれていない。取下げの通知に理由は書かれていない。
41(a)(1)(A)(i) of the Federal Rules of Civil Procedure, dismissing all claims asserted against
(連邦民事訴訟規則)41条(a)(1)(A)(i) に基づき、(LinkedIn に対して)主張したすべての請求を取り下げる
三つの訴訟とも、違法かどうかを裁判所が判断する前に終わっている131421。Cousart の命令は、訴状の書き方を理由とするものである21。
日本の個人情報保護法の改正
要配慮個人情報とは、人種、信条、病歴、犯罪歴など、差別につながりうる個人情報をいう。現行法では、取得や第三者への提供に原則として本人の同意が要る15。
要配慮個人情報の利用を、統計作成の用途に限って本人同意なしで認める方向とする
日本では、2025年2月頃から個人情報保護委員会によってAI開発を含む統計作成の用途においてのみ「要配慮個人情報」と規定されている人種・信条などの情報の利用を原則本人同意を求めなくても良い方向で法改正を進めている。この背景にはAI開発用途に取得した膨大なデータの中から個人情報を探し出し削除するのは現実的ではないとの声が事業者から上がっているためだという。違反した場合には課徴金を科す予定。*21*22
統計情報等の作成(*1)にのみ利用されることが担保されていること等を条件に、本人同意なき個人データ等の第三者提供(*2)及び公開されている要配慮個人情報の取得を可能とする(*3) 。
*2 当初に特定した利用目的(法第17条)の達成に必要な範囲を超える第三者提供を含む。また、当該提供により提供先が本人同意なく要配慮個人情報を取得することも可能とする。
以下は、個人情報保護委員会が2026年4月に公表した改正法案の資料に基づく15。統計作成等(「統計作成等であると整理できるAI開発等」を含む)にだけ使うことを条件に、本人の同意なしでできるようになるのは、個人データ等の第三者への提供と、公開されている要配慮個人情報の取得である。注によると、第三者への提供によって、提供先が本人の同意なく要配慮個人情報を取得することもできる。「AI開発を含む統計作成の用途においてのみ」要配慮個人情報を同意なしで扱えるようにする方向は、法案の資料と合う。
経済的誘因のある、大量の個人情報の取扱いによる悪質な違反行為を実効的に抑止するため、重大な違反行為により個人の権利利益が侵害された場合等について、当該違反行為によって得られた財産的利益等に相当する額の課徴金の納付を命ずることとする。
課徴金は、重大な違反によって個人の権利利益が侵害された場合などに、違反で得た利益に相当する額を納めさせる制度として、法案に盛り込まれた15。委員会の資料は、統計作成の例外を目的外に使った場合などを、課徴金の対象となりうる例に挙げている。「違反した場合には課徴金を科す予定」は法案の資料と合う。ただし、対象は大規模で重大な違反に限られる。
改正法は、2026年7月17日に令和8年法律第56号として官報で公布された16。ページは「法改正を進めている」と書いており、公布は書かれていない。本項が読んだ官報は法律の冒頭の頁だけで、成立した条文が法案の資料と同じ内容かは確かめていない。
医療記録の写真
データセット内に個人の医療記録が見つかったとする
画像生成AIにおいても、データセット内に個人の医療記録が見つかったとする指摘がある。*9
Late last week, a California-based AI artist who goes by the name Lapine discovered private medical record photos taken by her doctor in 2013 referenced in the LAION-5B image set, which is a scrape of publicly available images on the web.
先週末、Lapine と名乗るカリフォルニア在住の AI アーティストが、2013年に主治医が撮影した非公開の診療記録の写真が、LAION-5B の画像セットに収録されている(リンクされている)のを見つけた。LAION-5B は、ウェブ上で公開されている画像を収集したものである。
この記述は、ページが出典に挙げる GIGAZINE の記事20と、そのもとになった Ars Technica の記事17と合う。Ars Technica によると、あるアーティストが、2013年に主治医が撮影した自分の診療記録の写真が、画像データセット LAION-5B に含まれているのを見つけた。同誌は、同じような患者の写真が数千件あることも確認したと書いている17。ページは「指摘がある」と書いており、報道の範囲を超えていない。
未確認の事項
- 各記述がいつ書かれたか。atwiki の版の履歴は確認していない。訴訟の取下げなどがページの記述より前か後かはわからない
- ローマの裁判所の判決(第4153/2026号)の本文。申立人、決定のどの部分が対象か、違反の認定の現在の効力は確認していない
- イタリア当局の2023年4月11日の命令(再開の条件)の本文。3月30日の命令は主文とその直前の理由のみを読み、事実認定の部分は読んでいない
- オーストラリア上院の公聴会(2024年9月11日)の議事録。議会のサイトはボット確認の画面で止まり、取得できなかった。本項は委員会の最終報告書(第三者のサイトに置かれた写し)に依っている
- ANPD の決定の原文(官報に載った決定)。本項は ANPD のニュースの保存版に依っている。その後 ANPD が措置を解いたかどうかは確認していない
- 英国 ICO の2024年6月の声明の原文(URL が見つからなかった)。ICO からの要請は、Meta の発表の記述でのみ確認した
- 成立した改正法の条文。本項の日本の節は2026年4月の法案の資料に基づく。官報は冒頭の頁しか読んでおらず、国会での修正の有無と、可決の日は確認していない
- Meta が EU で実際に訓練を始めた日
- Cousart v. OpenAI の訴状と、原告が修正訴状を出さなかった理由
- ページが出典に挙げる記事のうち、ブルームバーグ(脚注18)、朝日新聞(19)、ロイター(20)、リスク対策.com(21)、日本経済新聞(22)、NHK(12)の本文は取得できず、読んでいない
- 同じ節のうち、X(旧Twitter)とアイルランド DPC をめぐる記述、ChatGPT から個人情報を抽出した研究の記述、日本の法改正の背景(事業者の声)の記述は、本項では照合していない
- 本項で扱った3件以外の、個人データをめぐる OpenAI などへの訴訟の経過
出典
- 「生成AIは何が問題なのか?」 atwiki「AI画像生成・生成系AI 問題まとめwiki」、最終更新 2025年10月5日閲覧 2026年9月30日、【0】【1】の本文と脚注の出典 URL を保存
- Garante per la protezione dei dati personali 「Intelligenza artificiale: il Garante blocca ChatGPT」 2023年3月31日(伊・英)閲覧 2026年9月30日
- Garante 「ChatGPT: OpenAI riapre la piattaforma in Italia…」 2023年4月28日閲覧 2026年9月30日
- Garante 「ChatGPT: Italian DPA notifies breaches of privacy law to OpenAI」 2024年1月29日閲覧 2026年9月30日
- Garante 「ChatGPT, The Italian Data Protection Authority closes the preliminary investigation」 2024年12月20日(2026年3月以降の注記を含む)閲覧 2026年9月30日
- Garante 「AI: The Italian Data Protection Authority requests information from Deepseek」 2025年1月28日閲覧 2026年9月30日
- Garante 「Artificial Intelligence: The Italian Data Protection Authority blocks DeepSeek」 2025年1月30日閲覧 2026年9月30日
- Meta 「Building AI Technology for Europeans in a Transparent and Responsible Way」 2024年6月10日公開、6月14日追記閲覧 2026年9月30日
- Data Protection Commission(アイルランド) 「The DPC's Engagement with Meta on AI」 2024年6月14日閲覧 2026年9月30日
- Meta 「Making AI Work Harder for Europeans」 2025年4月14日閲覧 2026年9月30日
- ANPD(ブラジル国家データ保護機関) 「ANPD determina suspensão cautelar do tratamento de dados pessoais para treinamento da IA da Meta」 2024年7月2日閲覧 2026年9月30日、原ページは閲覧に認証が必要と表示されたため Internet Archive の保存版で閲覧
- Senate Select Committee on Adopting Artificial Intelligence (AI) 最終報告書 オーストラリア上院、2024年11月閲覧 2026年9月30日、ボローニャ大学のサイトに置かれた写しで閲覧(第2章 2.26〜2.28 節)
- P.M. v. OpenAI LP, No. 3:23-cv-03199(N.D. Cal.)訴状(2023年6月28日)、取下げの通知(2023年9月15日)閲覧 2026年9月30日、CourtListener(RECAP)で取得
- De La Torre v. LinkedIn Corporation, No. 5:25-cv-00709(N.D. Cal.)訴状(2025年1月21日)、取下げの通知(2025年1月30日)閲覧 2026年9月30日、CourtListener(RECAP)で取得
- 個人情報保護委員会 「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案(概要)」および記者配布資料 2026年4月7日閲覧 2026年9月30日
- 官報 令和8年7月17日(号外第160号)11頁「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」(法律第五十六号)閲覧 2026年9月30日
- Benj Edwards 「Artist finds private medical record photos in popular AI training data set」 Ars Technica、2022年9月21日閲覧 2026年9月30日
- 「ChatGPTがイタリアで停止:学習データに含まれる個人情報保護が問題に」 WIRED.jp、2023年4月7日(ページの脚注10)閲覧 2026年9月30日
- 「MetaがFacebookとInstagramの投稿でAIを強化する計画をEUで一時停止へ」 GIGAZINE、2024年6月17日(ページの脚注13)閲覧 2026年9月30日
- 「画像生成AIユーザーがAI学習用データセットから『自分の医療記録の写真』を発見してしまう」 GIGAZINE、2022年9月22日(ページの脚注9)閲覧 2026年9月30日
- Cousart v. OpenAI LP, No. 3:23-cv-04557(N.D. Cal.。CourtListener の表題は A.T. v. OpenAI LP)棄却申立てを認める命令(2024年5月)、修正しない旨の通知(2024年6月14日)、判決(2024年6月27日)閲覧 2026年9月30日、CourtListener(RECAP)で取得。訴状は読んでいない
- Garante 「Provvedimento del 30 marzo 2023 [9870832]」(OpenAI に対する命令)閲覧 2026年9月30日、主文を確認
版の履歴
- 第1版 2026年9月30日 作成
本項は、AI(本版では Claude)が資料の収集・照合と草稿の作成を行った。編集担当による原典との照合は、本版では未実施である。